2018-04-24から1日間の記事一覧

苑の周圍   饒 正太郎  (詩ランダム)

苑の周圍 饒 正太郎 あらゆる草木の上に《春の聲》が弱い光の中で激しい喜悦、弦樂のアリア。 アトリエの扉が花の様に開く。ローズ・ド・コバルトの丘、續いてジヨーヌ・シトロンの丘。 小鳥は樹木の間から靜謐の苑を眺める。この無智の魚達。 神秘の森に獨…

金魚 竹村英郎  (稲垣足穂の周辺)

足穂の周辺の周辺というべきか。竹中郁の周辺の詩人のようだが。 金魚 竹村英郎 ──お孃さん、なぜあなたは姿見に布をかけないのです。お孃さんは二階の窓ぎはにぐつたりと籐椅子にもたれて金魚鉢にさすたそがれの陽かげをたのしんでゐなさる。(あら、この金…

聖夜  山中富美子  (詩ランダム)

聖夜 山中富美子 海のピアノ、冬の月光の曲、 透明なオーケストラ東洋風な燭臺、 ペツトの月よ、弟よ、おまへが黒い瞳を閉ぢる様子、 おまへは思出の椅子による、黑衣の胸に手をおいて、はげしい情熱で。 壁の後におまへは立つてゐる、夜がそれをみせぬ、恐…