2018-04-28から1日間の記事一覧

思出  山中富美子  (詩ランダム)

思出 山中富美子 綠のニグロが石段を下りる時、オリーヴは空の色に茂つてゐる、そこに伊太利の日光がさす。一片の明るい雲、時々、天使が浴みする熱帯地の雨はこはれた石柱にかゝつた。 海で死んで砂をくゞつてきた天然樹の足、若い蛇よ。月の海岸には泡が…

夜の花  山中富美子  (詩ランダム)

夜の花 山中富美子 左右の端麗な決定と悲哀とにかかはらず、かたはらまでおとづれた夜半は最早豫言を生命としない おおこの室内、すでに意味の無い輝き、沈んだガラスの神話、或ひは冷酷な無言が、死の床に時計の夢を、又はかたはな物語を傳へた。深夜のす…

海岸線  山中富美子  (詩ランダム)

海岸線 山中富美子 雲のプロフイルは花かげにかくれた。手布が落ちた。誰が空の扉をあけたのか。 路をまがつて行くと石階のあるアトリヱだ。いつもの方角へかたむいて、扉までとゞいた日影が、のびて行く所は昻奮する氣候を吐きだす白い海岸だ。そこはすつ…