2018-05-10から1日間の記事一覧

夢  小方又星  (詩ランダム)

夢 小方又星 かの女は、銀の涙をはらはらと流した。 わたしは かの女の名を知らない。姿も顔も憶えてゐない。ただ、いまも何處かで あの銀の涙だけが美しく光つてゐる ! わたしは見た、處女の眸からはらはらと星のやうな涙が夜の闇に散つたのを。あゝ 不思議…

菊  乾直恵  (詩ランダム)

菊 乾直惠 彼女が久しく寢てゐた部屋を閉め切つた。僅かに障子に穴を開け、そこから導管を差し込んだ。私は消毒器に火を點じてから戸外に出た。 私は沼の邊を歩き出した。野霧が籠めてゐた。月──月の中の蒼白い彼女の顔。彼女は絕えず痙攣する口腔から、ぺつ…