2018-10-16から1日間の記事一覧

母 その他  吉田一穂  (詩ランダム)

母 吉田一穂 あゝ麗はしい距離(デスタンス)常に遠のいてゆく風景……… 悲しみの彼方、母への搜り打つ夜半の最弱音(ピアニシモ)。 嵐 森彼女にひそむ無言。夜を行く裸形の群れ彼等は踊る。魚愚かなる野の祭り。 自像 黃金と香気の密かな文字を刻む深夜の薔薇背…

軍艦茉莉  安西冬衛  (詩ランダム)

軍艦茉莉 安西冬衛 一 「茉莉」と讀まれた軍艦が北支那の月の出の碇泊場に今夜も錨を投(い)れている。岩鹽のやうにひつそりと白く。 私は艦長で大尉だった。娉嫖(すらり)とした白皙な麒麟のやうな姿態は、われ乍ら麗はしく婦人のやうに思われた。私は艦長公…