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津軽照子『秋・現実』Ⅰ (モダニズム短歌)

・ひるの月かげ 嫁(ゆ)く人の
見られねばならぬかほを粧へ 

・かけすすりぬけた林の隙きま
しろいあかりの おもひでを見た

・茨の實いかに色づいても枯野の
孤獨(ひとり)のつみが ゆるされぬか

・いつぴきの栗鼠がすむ枯野原
 地軸さわさわしら雲をくり

・郵便配達夫(ゆうびんや)のうしろを霧が追つてゆく
記憶はひらかず

・沖へカメラむけて虹のいろをかぞへる少女(をとめ)ら
ひらひら波がもつれる

・砂にひろふ貝殻 二つあへば
虹のかげをいれやうとおもふ 

・飛行機 青波の底へとばしたい と少年は念ずる
ゆふぞらのよごれ 

・きいろい鳥射おとされてガチヤンとなる
こんなおとについえて憂欝はさびしい

・ききと波に囀る水着の少女(をとめ)ら 疲れて
射的店に廻轉する小鳥ら

・木はみどりのふかれふかれて風ぞら
ひとすぢのながれをもとめる

・日ぐれる 堪へてゐる窓に
梧桐(あをぎり)のしげりの底からの暗示

・雨の窓 桃の枝しめこんで 本よめば
頁にうつくしい陽かげあり

・アトリエの女 花瓣(はなびら)のやうに臥(ね)て
ばらの繪を描かうとおもふ

・人がいつてしまつた あと一面の
眞青(まつさを)のむぎばたけ 

・しがれつと灯の一點にもつれかげろふ
干潟の 人とゐられる 

・潟にこもるしろい貝殻ら
あこがれは 沖のしらほとなり 

・ふなべりに そこにゆれてるまつくろの山
星ぞらのスカイラインたどる 

・人ごゑばかりのはしけにしやがんで
ゆれる ゆれる 星いつぱいのそら



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