聳ゆる宮殿  石野重道  (稲垣足穂の周辺)

 

 

──旅人は際しなきシリアの広原に、バラ色の空に呼び覚まされた。
香りよき一本のエジプト煙草をくゆらせるのであつた、
立ちこめた夜が開き初めて、朝霧の幾重ものトバリの立ち退いた遠き東の方に、蒼空に聳ゆる、麗美なる宮殿があつた
旅人は、その宮殿を、見凝めるのである──


 タバコの煙の、旅人の目よりも高く消ゆる時、彼の東方の宮殿も、消え去つた、

 

 

石野重道「廃墟」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/07/05/221543
石野重道「キヤツピイと北斗七星」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/07/05/212056
石野重道「赤い作曲」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/07/06/220848
田中啓介「月夜とTABACO」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/07/10/193805
星村銀一郎「水夫とマルセイユの太陽」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/06/01/215431
星村銀一郎「PARE SSEUX MERITE (怠惰な偉勲)」
http://azzurro.hatenablog.jp/entry/2017/07/05/201935