上田穆 Ⅱ  (モダニズム短歌)

 


・無理な無電を受信する 怠慢な原住民よ 地球のあちらが拜火教

・身邊(しんぺん)の妖氣(えうき) 輒(すなは)ちスヰートピイ發信の轟々(ぐわうぐわう)たる放電の川 つまり寒帯の沙漠も寛闊(くわんくわつ)さ

・勞作嫌(らうさぎら)ひな精神のHook a gyps 満月の古文書村(こぶんしよむら)を聽問(ちやうもん)し ああ松風やアイスクリーム

エレクトロンお呉んなさい 勲章の銀ピカで この領域に時刻かぞへるはかり賣り

・ペンを垣根に ケンのある瞳(め)で楚々(そそ)と來る 甲冑(かつちゆう)や機關銃 カタログ凾に翻案たのむ

・縞目あざやかな朝を眺め、タイピストの僞裝の据ゑ置かれた音符で過ぎた

・依怙地(えこぢ)な變種で浮揚する確信よ、ダービーの山高帽ほど放送員を駐在させた

・世紀をふるく翔(と)んでゐる氣象らの體臭的なやはり傍觀へ折れまがつてゆく

・均衡のはるかに見えるひもじさやはぢらひや以下は塗りつぶされぬ

・草なびくアポロンを知り、堪へがたき四つん這ひのさまを見忘れてすぎぬ

・飛ばないパンセを使嗾する 戰術のタンブラア。このときあのとき白い葉裏ひるがへる

・池のほとりのニンフらの兩手にあまる時間を見、姿を自分にかくしてしまふ

・遠いギリシヤから、その思想は流行(はや)つてきたといひ、薔薇の棘を胸に挿してある

・羽搏く翳がひろまつてゆき、くつきりと忘却を重ね、今朝の鳥を今朝は見送る

・一點 凹んだところ、感覺の鮮かでない輕氣球 今日の今日

・硝子および美しくない思考、生理的な競馬場へ、なんと靜肅だ

・社會のくづをれた地圖や歴史やへパピルスのpapa,pipi かんざしの赤がよい

・幾何圖形を劃(くぎ)つて雪に昏(く)れ、晴れて湖のやうな見開いた兩眼を通過しただけの確かさよ

・結構なお化粧だ、長い手袋だ、レディ! どうかシガーを召上れ

・貿易ノかあぶハ熱帯圏。莞爾ト鳥毛ダチ、空路標識ノヤウナ市場

・すとつく品ヲ軌道ニ載セ 鏡ニハ日暦ガ映ル。寒イト發音スル

・落葉ヲ焚クト古人ハ謂ヒ、遂ニ機械。痛苦ニ凍テ、吹雪ニ捲カレ

・斷ジテ決然ト、終夜作業ハ人間ヲ蝕ミ、一刀兩斷ニ星ガ降ル

 

 

 

上田穆 Ⅰ
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モダニズム短歌 目次
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