短詩 冨士原清一  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

 

園庭
遊動圓木をわたる叫びごゑ
朝日に照らされた少女たちの胴體(トルソ)
焦だつ思ひで見てゐたわたしは足袋を汚して

 


鴿の來て踏むわたしの墓碑
わたしの頭痛は永遠に置き忘れられた
蕁麻(いらくさ)が生える わたしの掌に根をおろして

 

梅の花

春ごとに公園の梅の花が咲き出すと
ぼくの知ってゐる囚人が牽かれてゆく
「旦那 もう少しだけ世の中を見さして下さい」
頰の汚れた子守女たちが彼の世界に來て坐る

 

 
軍鶏(しやも)が朝はやく人の家をのぞきこんで啼いてゐる
遠くで矮鶏(ちやぼ)の應戰のこゑが聞えた

 

 

稲垣足穂の周辺 目次

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