裂かれた森を貝殻の腦髄が梳いた 上田敏雄 (稲垣足穂の周辺)

 

裂かれた森を貝殻の腦髄が梳いた


             上田敏

 

貝殻の側に星が岸へへばりついた

暫くたつた後で貝殻の生身が乳房のついた舌をのぞかせた

 腦髄の割れた處に梳かれた頭髪がぎざぎざな岸をづり動かした後でなめらかな星をいただいてゐた

 

 


『FANTASIA』第1輯 昭和4年6月号

 

 

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