毀れた街 衣巻省三  (稲垣足穂の周辺)

 

稲垣足穂と共に、佐藤春夫のところへ出入りしていた衣巻省三の詩です。

 

毀れた街

           衣巻省三
    小 鳥


胸の中に豆電氣がともつてゐる


    航 海


魚となつててのひらよ、艶やかな襟首の流れを下り、たぐひまれな
彼女の入江にまで、春日遲々とたゞよひゆかん。


    毀れた街


崩れた階段を薔薇が一輪をちて行く
蜥蜴めがアスフアルトの頗にのがれた

港の街のまひるどき
ボーツと汽笛が鳴る

 

    アイスクリーム


私の戀人よ
あまりながくほつておくとお行儀が惡くなる

 

    競 爭


言つてしまはぬうちにうなづいてしまふのです。で僕は終りに至つ
てその話の方向を換へて立ち上つた。それより早く、O君はシガー
の心までジイと吸ふてぽいとすてるともう歸るのかいと言ひました。

 

    


水泡を食べてゐる鮎よ
高貴なる藝術作品よ
夢を食べてる僕よ
君等風雅な食膳に上るのだが
實用品ではありません
何と世に俗な口の多い事だ

 

    宮庭のラツパ


シウル・レアリズム
プライドそれみずからの藝術

 

 

『FANTASIA』第2輯 昭和4年(1929年)12月号

 

 

 

稲垣足穂の周辺 目次