金魚 竹村英郎  (稲垣足穂の周辺)

足穂の周辺の周辺というべきか。竹中郁の周辺の詩人のようだが。

 

金魚

         竹村英郎

 

──お孃さん、なぜあなたは姿見に布をかけないのです。
お孃さんは二階の窓ぎはに
ぐつたりと籐椅子にもたれて
金魚鉢にさすたそがれの陽かげをたのしんでゐなさる。
(あら、この金魚は盲目だわ ! )
夕凪にちかいしづかな風は
足穗の上をわたつて
お孃さんの黑髪を金魚鉢にひたしてゐる。
──お孃さん、なぜあなたは姿見に布をかけないのです。

 

 

 

『竹村英郎詩集』(ポエチカ社 1936)

 

竹村英郎 長靴

 

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