果して泣けるかについて
きみは知らない
酒井正平
雪の中でぼくはみた
ペリカンはペリカンであつたと
十棟の夢が僕を裸にする
馬がその活素を吹きながした
僕はベッドの上でバラを嗅いだ
センセイョと僕は白い髯をみた
センセイョぼくは馬になりたい
みよ 町はミルク色の道路がその時々の死活を無視してもゐるのに
朝の空氣はおそらくはつめたからう
センセイョ ぼくの胸の
鋼鐵(はがね)でできた蟲たちが昨日の挨拶まで忘れずにいふのを
そして棘々しい夢がいつか木立を直してゆくのを
樂器といふものが今の昔にも通用した様に
『文學』(厚生閣書店 1933-03)
酒井正平 画布に塗られた陰について
酒井正平 航海術
酒井正平 肢
酒井正平 説話
酒井正平 その日に聞かう
酒井正平 天文
酒井正平 七日記
酒井正平 窓
酒井正平 洋服店の賣子など