夏の一頁  山中富美子  (詩ランダム)

 

夏の一頁

         山中富美子

柱の下で過ぎて行く夏
月曜日の長椅子の花の一むれ
つかれた頭を、そこにうづめる。
瞳をそれて空の方へ。


雲は正午の壁の向ふに。
玻璃の海の恐怖を浮べて
ものうく眠る。


日にやつれたガラスの茂みに
涼しい日向の時計は空しく綠にかこまれ
早くもタイムは逆しまだ。


エスの部屋に忘れた日記の如く
白い手巾は床に映つて、なほ、
生きてゐる。

 

 

 

 

『MADAME BLANCHE』第1号 昭和7年(1932年)5月

 

山中富美子 思出

山中富美子 海岸線

山中富美子 姿勢する

山中富美子 睡眠

山中富美子 聖夜

山中富美子 園の中

山中富美子 沈默

山中富美子 夜のイニシヤル

山中富美子 夜の花


 

 

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