靜かな饗宴
澤木隆子
わたしの明るい罪惡悔ゐなき魚族の沈默スリツパから立ち上る夕ぐれの虹のだんだら
いもうと お前は明暗のレエスを引きしぼる緞帳の紅をゆすぶるここの階段にリユストルをともしてくれる
おまへはわたしの足もとの疲れた花片をたんねんに拾ふ兩腕にかかへる
おまへのもつともらしい眸よアスパラガスの感性よ葡萄色の觸感よ
わたしは一つのパラソルにすがる出て行かうとするおまへに渡すまいとするかあいそうなおまへよこの最後の花冠そそらうとするのであるか
『MADAME BLANCHE』第5号 昭和8年(1933年)2月
澤木隆子 記憶
澤木隆子 心
澤木隆子 春の約束
澤木隆子 額のばら
澤木隆子 雪