海賊 その他  西川満  (詩ランダム)

 

海賊

             西川滿

俺は船長だった。
海洋の日没が俺の心を襲ひ、船腹を血に染めた。
黒死病で倒れた舵夫の屍を水葬に附した後、俺はいつか盲目(めしひ)になつてゐた、盲目に。

 

 

俺を救つてくれた若い豹よ。
きみのそのたくましい肉體のうねりに、俺は愚かな過去のアフリカ地圖を棄てる。


さあ共に行こう。新たなる大陸に向つて。

 

   ──白い封筒を寄せるあるひとに──
遙かなる海港の鷗が僕の部屋を訪れる。おびたゞしい傷痕の夕燒をもつて。

 

 

 

西川満    夫人

 

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