日曜
井上多喜三郎
靴磨き台上の 空の靑さよ
僕の頰に隣の草花店がうつるので
蝶のやうにとびたつネクタイでした
公園
風の子が ソーダ水を捧げてくる
コツプの中では 金魚がはねてゐる
濡れたリボンは フレツシユです
室内
豆ランプのなかには コオロギが住る
豆ランプは お母さんの乳房を探す
※元詩では、「住る」は「(ゐ)る」という振り仮名あり。
『花粉:井上多喜三郎詩集』(内藤政勝, 1942)
井上多喜三郎 言葉
井上多喜三郎 徑
井上多喜三郎 時間
井上多喜三郎 綴れない音信
井上多喜三郎 蜻蛉
井上多喜三郎 窓