航海 その他  瀧口武士  (詩ランダム)

 

航海

           瀧口武士

夜おそく、船長室の窓をあけて、彼らは小さな會話を始める

 

 

Cabinの窓に秋が來た
河岸にある舟舟舟
あの帆柱をかぞへてごらん──猫が居るから

 

 

高臺

三月の高臺は鶯曇りである
坂になつた段々の街で
午前の時計が鳴り合つてゐる
遠い市街に電話をかけると
馬車のひゞきも聞こえてくる
春になつた海邊の街から
汽車が鐘をならしてやつて來る

 

 

 

梨の花
椅子

室の裏に新道がある

 

 

 

『園』(椎の木社 1933)

 

 

 

瀧口武士 古き市街


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