黄昏
林修二
音もなく闇の潮が充滿する
しじまの海底に沈んで私は失明する
海への幻想に追はれながら私は
眞珠貝を手さぐる
私は疲れてしまつた
仄かなランプの光りチヂに碎け
靑いノスタルヂイアが波色に笑ひかける
遙かなる海風の響き
海藻の紅い翅が女扇のように私の頰にうねる
私の瞳はひととき
黄昏の匂ひの夜光蟲のように
きらめいてくる
「台灣日日新報・文藝欄・台灣詩人作品集6」(1936年3月3日)
『林修二集』(臺南縣文化局 2000年12月)
『日曜日式散歩者』(行人文化実験室 2016年9月)より
水蔭萍 雄雞と魚 台湾 風車詩社
利野蒼 或ル朝 台湾 風車詩社
丘英二 星のない夜 台湾 風車詩社
戸田房子 遠い国 台湾 風車詩社