2017-03-27から1日間の記事一覧

斎藤史『魚歌』Ⅱ (モダニズム短歌)

・山の手町がさくらの花に霞む日にわが旅行切符切られたるなれ ・野生仙人掌(さぼてん)や龍舌蘭の葉に刺されゆく白い不運はしあはせらしく ・南佛にミモザの花が咲き出せば黄のスカーフをわれも取り出す ・赤白の道化の服もしをれはて春はもうすでに舞台裏な…

筏井嘉一『荒栲(あらたへ)』Ⅱ (モダニズム短歌)

・天気よく郊外の道をさまよへばRousseau(ルウツソオ)描(か)きし樹(き)や家があり・やるせなくO.Sole,mio(オ・ソレ・ミオ)はうたへどもわが太陽は今日も照らずも・映畫にて巴里(パリ)あはれなる戀がたり見てゐしほどはまだ救はれき ・澤庵を咀嚼する母の脣(…

筏井嘉一『荒栲(あらたへ)』Ⅰ (モダニズム短歌)

・夢さめてさめたる夢は戀はねども春荒寥(くわうりやう)とわがいのちあり ・わが内(うち)に神を見ぬ日ぞ焦燥す肉體ひとつおきどころなく・めざむればラヂオ鳴るあれは春の唄Mendelssohn(メンデルソーン)に朝なごみゆく (メンデルソーン=メンデルスゾーン) ・…