2017-06-08から1日間の記事一覧

廣江ミチ子 Ⅰ  (モダニズム短歌)

・花ひらく この家のフラスコは既に壊(こは)れた 古びたる庭の隅で羊齒は風琴を彈(ひ)いてゐた ・音符の灯がついた あかるい階段を一つ一つのぼつて行くピアニストのてぶくろの影 あれはラヂオです ・いく晩も年りんに月が出た 稚魚の住む みづうみは銀のら…

日比修平『冬蟲夏草』Ⅰ (モダニズム短歌)

・斯きて花ひらかせし罪ゆゑにひとでとなりて土にひれふす ・溫室の天のガラスに海港のとある場面がさかさまに見え ・御(おん)とのゐ絶えてあらねば球根はにく厚き芽をふきにけるかも ・溫室にぬすびとひそみ居るなれど花瓣がそつてひらく夜となり ・裝束の…