2017-07-05から1日間の記事一覧

廃墟  石野重道   (稲垣足穂の周辺)

足穂「黄漠奇聞」の元になった作品。 足穂がその構想を話したら石野がこの作品を作り、それをベースにして「黄漠奇聞」が書かれたと云われている。 (『彩色ある夢』1983年版より) はてしなき砂漠である。 太陽があかく砂から昇つてさうして砂のなかへあかく…

キヤツピイと北斗七星 石野重道  (稲垣足穂の周辺)

『彩色ある夢』(1983年版より) さすが、稲垣足穂の盟友というべき作品。 キヤツピイは、リンゴの頬の、キイロいネクタイの少年で、夜芝生の上に、腰を下ろして休んでゐた。あたりは静であつた、キヤツピイは星を眺めてゐたが──からだを三つの弓にして、長い…

PARE SSEUX MERITE (怠惰な偉勲) 星村銀一郎   (稲垣足穂の周辺)

勲章を吊げた天使は劇場の煙突掃除をしてゐた時に黄昏の魚の跫音がした。魚は綠色の腦膸を映寫する故に私は小鳥の睡眠する海へ逃亡する。午後は憂鬱の海の園丁の頸に波斯猫の眼を燃やす斯かる永遠の瞬刻に於て私は女優の肖像を崇拝する。それを知つた女優は…