2018-06-11から1日間の記事一覧

マダム・ブランシュ3  冨士原清一  (稲垣足穂の周辺)

3 白い霧がふつてきました。洋燈(ランプ)はさんさんと咽び、ガラスは昏々と眠り續けてゐます。高層建築は薄すれ、寺院の圓頂(ドーム)は夢のやうに沈み始めました。いま街は海底に明るい潜航艇の漏光を想像させ、私はこの白色の瀰漫してゐる濕潤ある液狀空間…

マダム・ブランシュ2  冨士原清一  (稲垣足穂の周辺)

2 すくすくと豊麗な月がシヤボン玉のやうにあがり、はたはたと靑いアルミニウムの旗をひるがへせば、實に素晴しくも華やかなガソリンの夜です。──それは靑い、靑い、靑い。はや踊り場のクラリネツトは風邪をひいてしまひました。 まあ──、なんて妙に明るい月…

高群郁  (モダニズム短歌)

久保田正文編『現代名歌選』は、新短歌を前衛短歌運動の一環として、プロレタリア短歌と区別していて、その新短歌のチャンピョンとして上田穆、中野嘉一、山田盈一郎、林亜夫とともに高群郁を ひとまとめにしているのですが、手に取った作品の多くがテーマ的…