廣江ミチ子 Ⅲ(新庄祐子名義)  (モダニズム短歌)

 

        火山

・霧すくなく立つ かたむけよと我がてのひらをかへす めざめてあればまなかひにくもる歌よ

・入江ある島にすむわづかなる作法にいたいたしいまひるの朗誦の吃音である

・麻の袋 その低いトオン 老いたソリジア 濱名湖の靑い寫眞がうつる

・人工の印象 續いてかく ああ私の過酷な歳月 大きな嘴を砂につきさして答へた

・林檎の樹を尋ねず 酬いず この源泉といふ巷のひとなる

・秋に死ぬ ペルセフオネの町よ 藁の都 靑空の日ありき 師の旗

・キイの形態である 擾亂する わが講座 盲ひた

・もゆる風の帶 救ひのちまた 我が行為の布告のためにナルシスの鏡還る

・地の歸國を信じたい 一なるやかた 地の鹽に再びのせよ林檎を

・冬への欲求は終るかもしれぬ 習作ゆゑ よまれよ 汚泥にみちてある一篇の向日葵の中に


『新短歌 年刊歌集 1938年』より

 

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