グウルモンにささぐ
シモオヌ 雪はそなたの脛のやうに白い
シモオヌ 雪はそなたの手のやうに冷い
たそがれ 丘の上に雪がわたる
丘の下ではたくさんのシモオヌが死んでゆく
無題
月光に空氣銃の先がひかつてゐる
猫はむかふをむいて動かない
私はトランプの肌に耽つてゐる
眞晝のようなしづけさ
空氣銃で猫をどやしつけようと思つてゐる
發狂
薔薇色の一點が私をいざなふ
ふいとその方へ道をそれる
眠りに入るように引きづられて行つた
目覺めようとすることはくるしい
元の軌道はもう見えなかつた
ここの方がよほど樂である
梟
森に黄色い提灯をつけてゐる
惡徳行爲がどこかではたされた
憂欝
いろんな音響が生埋めにされてゐる
闇
彼女のうちには闇があふれてゐる──ボードレール
懐中電氣をもつて彼女の地下室にをりて行つた 何が彼女を美しくさせるのであらうかと思つて 私はなにもみつけることはできなかつた 電氣がたちまち消化されてしまつたからである 霜のような凜烈たる闇の潮にやがて私をも失つてしまつた
背中合せ
どちらかゞ地球を一と廻りしてをいで
さすれば面と向き合へる
近くて遠い仲とはこのことにて候