佐藤登里子  (モダニズム短歌)

 

・街燈の影にしほれるコロニイ 踊子達は花束の手術をうけてゐる

・機械になつた踊子達 笑ひを押しつけられて花束が崩れさう

旅愁の馬が走り去つた 綠のモノロオグ 踊子はナイフの足で滑つてゐた

・海の大きな窓 落下傘が花束になつて浮びあがつてきた

・夢から出てくると 足音を忍ばせて 月はフイルムを寫して見せる

・陸橋は濡れて搖れ いくつものモノクル喪はれ 黄色い海をひろげる

・月光が歩き出した 大きな月見草の傍で 風は搖籃を釣り下げた

・貝殻は海の響が好きになる 草たちのむれは砂丘に沈む

無花果の葉にメロンがかくれる 切り拔きの月は張られたまま

・草花の莖が伸びて 夕暮の廂に碧いレエスが懸けられる

・城塞を過ぎる趾の感激 愉快な弱点となる エルムの鐘も楽しく

・ふもとから 失はれる山 結婚式に瓦斯マスク持ってゆく國に唯一つ白い花

・氷の椅子が一つ 海からもくる 朝のフオークを置く

・坑をのぞく碧い悼しみ エルムの鐘 風は露地にはいつてゆく

 

 


モダニズム短歌 目次


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