聖夜
山中富美子
海のピアノ、冬の月光の曲、
透明なオーケストラ
東洋風な燭臺、
ペツトの月よ、弟よ、
おまへが黒い瞳を閉ぢる様子、
おまへは思出の椅子による、
黑衣の胸に手をおいて、はげしい情熱で。
壁の後におまへは立つてゐる、
夜がそれをみせぬ、恐怖のマンドで。
冷たい焰はもえあがる、
舞臺風なすがたで、おまへは翼をかくす。
死と呼ばれる魂の傍、そこによりそふ夜よ。
「マンド→マント」か?『詩抄 1』(椎の木社)のデジタル版からなのだが、「で」の濁点の間には空間が見えるが、「ド」にはそれが見えない。紙の混入物か。
『詩抄』(椎の木社 1933)