睡眠
山中富美子
白い叢に隠れて、眠る天の腕が私を抱きにくる。私の足が地を離れる。毛布が脱げる。身体が雲の外に出る。翼が空を切る、私は海に飛びこむ。波は私を呑み、その口から一個の石を吐き出す。寢臺の中でそれが薔薇色の肉體に變る間、天の地圖の上で、はぐれた夢が路を探してゐる。夜明の地球へ歸つてゆくために。
野田宇太郎編『火枝』(糧発行所 1939)
山中富美子
白い叢に隠れて、眠る天の腕が私を抱きにくる。私の足が地を離れる。毛布が脱げる。身体が雲の外に出る。翼が空を切る、私は海に飛びこむ。波は私を呑み、その口から一個の石を吐き出す。寢臺の中でそれが薔薇色の肉體に變る間、天の地圖の上で、はぐれた夢が路を探してゐる。夜明の地球へ歸つてゆくために。
野田宇太郎編『火枝』(糧発行所 1939)