形なきもの  恩地孝四郎  (詩ランダム)

 

形なきもの

         恩地孝四郎


ふり敷いた雪に散る光
室のうちはまだ冷えびえとしてゐるに
どこか幸福なものが心に芽ぐんでゐる
瓶のヒアシンスに凝つてゐる蕾、
ひえびえと冷氣のしみる肩に私は飢を感じながら、
何か幸福なものを身にする

もの捉へるものは形なきものであるが、

     ⚫

美しい孤線を虛空にひく、
空は靑さが消え、一面の白紙、
誰がこの美しさを描いたか、
はるかに愛するの泛ぶ。
誰としもない愛する人

 

 

 

 恩地孝四郎 海と女體

 

 

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