急行列車  折戸彫夫  (詩ランダム)

 

急行列車

           折戸彫夫

急行列車は發車した──マグネサイレン
 (街はスクリーンの中にあるのです)
機械座をレールは走つた──ピストンの街
 (ラツシユ・アワーは劇場に白薔薇と脚光を撒いてゐました)
爆音です。No.3333──U型のカーブがある
 (アルミニウムの圓筒と白い婦人がカーテンの蔭に眠つてゐる)
急停車──驛がある──蒸氣がある
 扉が開いた──眞鑄を抱いておりた奥さん
──警笛です
一秒間──爆音の螺旋筒──回轉する車輪=ローマ字
──無限空間の窓とアルミニウムの羅列である

 

 

 

 

※原詩では「脚光」は「フツトライツ」、「驛」は「ガール」と振り仮名があるのですが、「脚光(フツトライツ)」としてしまうとレイアウトがずれ間延びしてしまうので、ここに注記します。

 

『化粧室と潜航艇』(ウルトラ編輯所 1929)

 

 

 

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