春の約束
澤木隆子
空の鏡が拭き清められたうらゝか
地上の花を愛しむには面映ゆい
けれど二ムフのやうに快い匂ひをふり撒き硝子の家から花達は招く
召し上れ
召し上れ
魔法色のお砂糖水
彼女らの和やかな身のこなしに牽かれて
うつかり人はそれをのむであらう
二ムフらは捧げるコツプに唇をよせ挨拶も忘れて
軈て少し眠たげな彼女らの瞳の中に醉ひ痴れた蝶をみる
『MADAME BLANCHE』第1号 昭和7年(1932年)5月
澤木隆子 記憶
澤木隆子 心
澤木隆子 静かな饗宴
澤木隆子 額のばら
澤木隆子 雪