ハツプスブルグ家の森  近藤東  (詩ランダム)

 

ハツプスブルグ家の森

            近藤東

宵闇がお前の室をだんだん暗くする。

お前はそれに逆らつて化粧する。

それは百年づつ昔を物語る。白い下肢のあたりから。

ハツプスブルグ家の森を愛撫する。

僕は僕の旅行を中止する。

鏡の中の椿の花が僕の唇へとんでくる。

天使が跫足をぬすんで退場する。

 

 

 

『MADAME BLANCHE』第3号 昭和7年(1932年)11月
詩ランダム