南方飛行便  伊東昌子  (詩ランダム)

 

南方飛行便

           伊東昌子

流行りの演說については
地方的だと云ふ非難があり
晴れた日の飛行について手紙を書く
綠色の市場へ急ぐ
飛魚たちの腰を見給へ
コムミュニストたちのロマネスクが問題になる
スヰイトピイ栽培と勞働價値について
及び草花の懐疑と云ふ著書を持つ


島の男がやつてくる
趣味としては政治運動
スポオツのは諷刺映畫
色としては赤い郵便車
牛の角に似たパセリイを茂らせ
戰爭の音がする
と云つては豆を嚙つた

 

 

 

『20世紀』第7号 昭和11年(1936年)7月

 


伊東昌子 海の方へ
伊東昌子 失踪するエロイカ

 

 


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