オペラの部  饒正太郎  (詩ランダム)

 

オペラの部

            饒正太郎

チエツコスロバキヤの鵞鳥よ
料理屋のギターよ
けふは床屋の結婚式
葡萄の實を投げたまへ



サン・ジユアンの祭の日
君は茶色の自轉車をこはしたね
戰爭はまもなくつまらなくなるよ

 

太陽は馬丁のそばで
薔薇のやうにピカピカするし
ボオンピイ河岸では
アンダルシヤの娘が齒を磨き
ミリオネエルはチンパンヂイの夢をみる
マーク紙幣に注意したまへ
旅人はやせたロバに乗りたいと云ふ
初戀の家庭敎師には
麥藁帽子がよく似合ふ
馬車のひびきと洗濯屋の音



ヴイタミンと云ふ
牡馬が彫刻家の麥畑を荒したと云ふ
音樂的な話方が流行するだらう



朝食の鐘はなりひびき
僕等は水夫と話をする
君のジヤズ・ソングは空氣銃に似てゐるね
スワンは明日お休みです
花園で貧血を起こしたレトリツクの詩人よ
若き農夫は薔薇と眠る
蜜蜂と唄聲と

 

 

 

 

『20世紀』第3号 昭和10年(1935年)4月

 

 

饒正太郎 白いCabin
饒正太郎 苑の周囲

 

 


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