白と黒  左川ちか  (詩ランダム)

 

白と黑

           左川ちか

白い箭が走る。夜の鳥が射おとされ、私の瞳孔へ飛びこむ。

たえまなく無花果の眠りをさまたげる。

沈默は部屋の中に止まることを好む。

彼等は燭臺の影、挘られたプリムラの鉢、桃心花木の椅子であつた。

時と焰が絡みあつて、窓の周圍を滑走してゐるのを私はみまもつてゐる。

おお、けふも雨のなかを顏の黑い男がやつて來て、私の心の花壇をたたき亂して逃げる。

長靴をはいて來る雨よ、

夜どほし地上を踏み荒して行くのか。

 

 

 

※原詩では「焰」は、火偏に「稻」の右側のつくりなのですが、貼りつけり漢字を見つけられませんでした。「焰」の異体字

 

 


『MADAME BLANCHE』第1号 昭和7年(1932年年)5月


左川ちか 雲のかたち
左川ちか 花咲ける大空に
左川ちか 春
左川ちか 冬の詩
左川ちか 目覚めるために
左川ちか 夢

 

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