2018-08-01 春苑 笹沢美明 (詩ランダム) 春苑 笹澤美明 かつては櫻の苑の中にゐたあなたの瞳(め)と一緒に、あなたは信賴されまるで樹々を支へてゐるやうであつたやがて花噴く枝を。 あなたは苑の中で堪えてゐたゲツセマネの園のやうな暴風の豫感の中で私が送り出す獸を冷かに一匹づゝ捕獲した。 つひに一つの樹からあなたの掌は降りたひとつの世界を招くやうにそれは白く飜へつた苑に光りの飛沫を與へながら。 かくて櫻の苑の中にゐたあなたの瞳と一緒にあなたが壞れた私を支へ花噴く枝々の間から私が昇天するまで。 笹沢美明 河 詩ランダム