河  笹沢美明  (詩ランダム)

 

   幼兒に與へる

            笹澤美明

おまへから河が流れる
まだ地下水のやうに
かすかに響く
兩岸はすべて宇宙だ
季節は花々を映し
月々は果實を投げる
河口は遠くにあつて見えない
未來とは夢だ
それは神だ
おまへはつかむことが出來ない
それは時間の微粒分子が
形づくる雲だ
おまへは河だ
自身が流れた
何ものもないやうに押し進む
おまへは名を持ち
大きな仕事を持つ
完成すると最早
おまへは何だろう
葉を潤ほし
果實を產んで
永久に自身の名を保つ
夏だ

 

 

 

 

笹沢美明 春苑

 


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