2018-07-22から1日間の記事一覧

悲しき恋  西條成子  (詩ランダム)

悲しき戀 西條成子 白い一片のハンカチイフは風に舞つて森の奥の靜かに靑む沼の面に落ちたのですそこは若葉がゆれゆれて駒鳥は唄ふ晩春でしたがやがて靑白く染つてハンカチイフは底知れぬ沼の暗さに沈んで行つたのです 『MADAME BLANCHE』第7号 昭和8年(1933…

雲のかたち  左川ちか  (詩ランダム)

雲のかたち 左川ちか 高い波の銀色の門をおしあけて行列の人々がとほる くだけた記憶が石と木と星の上にかがやいてゐる 皺だらけのカアテンが窓のそばで集められ そして引き裂かれる 大理石の街がつくる放射光線の中をゆれてゆく一つの花環 毎日 葉のやうな…