2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

瞳 林修二(林永修) (詩ランダム)

瞳 Y子に贈れる…… 林修二 音もなく溢れる紫色の靜謚天使の羽音に開く紫の菫よ甘き薔薇の香漂へる清く和やかなる心の窓よその下に私は憩こう 蒼い靄にふるえる月の琴絃(いと)安らかなる森の小鳥の夢限りなき神秘と蒼き夢を湛えて白く澄んだ美はしの湖水よその…

郷愁 林修二(林永修) (詩ランダム)

鄕愁 林修二 心靜かに髪を嚊ぐ 尾灯(テイルライト)をつけて血管をめぐるHEIMWEG 貝殼は海の響を懷かしむ 郷愁 林修二 心静かに髪を嗅ぐ 尾灯をつけて血管をめぐるHEIMWEG 貝殻は海の響を懐かしむ ※HEIMWEG(ハイムヴェーク)=帰路(ドイツ語) 上は『林修二集』(…

喫茶店にて 林修二(林永修) (詩ランダム)

喫茶店にて 林修二 回轉するレコードに乘つて回轉する無為の時間硝子のバラにも香りがあつてほしいものだ 靜脈の上に蝶がとまる理性の眞空がストローの眞空を置換える心臟に黑いリボンを飾る零の回轉 ソーダー水の泡を数へる者よ君は夢が多すぎる 喫茶店にて…

夫人 西川満 (詩ランダム)

夫人 西川満 夫人は動こうともしなかった。 夫人の腰には美しい海牛がまつわり、蒼白い月の光を浴びてぬめっていた。 おびただしい鰯の群れが漂い来たって、不透明な硝子の潮流を作ったかと思うと、もうキューポラの方へすぎて行った。 半ば海底に埋もれたド…

迷路 利野蒼 (李張瑞) (詩ランダム)

迷路 利野蒼 絢爛な風の葬式が古廟の屋根から榕樹の迷路に出て來ると娘の眸が眞紅に燃えた 「媽祖」第9冊(昭和11年4月) 利野蒼の現在発見されている作品は全20作。その内2つが短編小説、残りは詩、その詩のうち7つが、台湾の研究者によると現在中国語訳しか…

風景ノ墓石 利野蒼(李張瑞) (詩ランダム)

風景ノ墓石 利野蒼 烟ノ花束 退屈ノ輪ガ夏ノ祭典二投出サレ永遠二夢見ヌ雜草ノ群 無意味二少女ノ日傘二戱レ 逃場ヲ失ツタ光線ハ少女ノ匂ヲソツト盜ミパラソルノ薔薇ヲ拔取ツテ武裝シタ木麻黃ノ葉蔭二凭レ 輦霧(レンブ)ノ香リヨ 樟ノ林ヨ寧靖王ノ寂靜ナル眠床…

テールームの感情 利野蒼(李張瑞) (詩ランダム)

テールームの感情 利野蒼(李張瑞) 南の街の舗道が感情のナイトキヤツプを被るとテールームのビクトロラは静かに悲哀の最低音から立ち上る。 無為から恋愛を造型せんとするハムレット 莨の消毒が感情のアスピリンとなったとき、棕梠の葉蔭から美しい笑ひが消…