2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

横山房子  (モダニズム俳句)

・南風の港の晝に今日も來(き)ぬ ・アシカ棲む水にすだまは夜は戱(たはむ)る ・原稿の出ぬ日の貌が壁を凝視(み)る ・遊歩場朝(あした)のバラに人在(あ)らず ・日時計の埃に高く陽がゆける ・戰傷者のバス過ぎ鋪道よみがえる ・昏れ早き一日の果を米濯ぐ ・濯…

村田とし子  (モダニズム短歌)

・何と云ふかなしい歌をうたふでせふ雪のふる夜は蓄音機までが ・王女さまの瞳のやうなはなやかさぱつちりひらいたたんぽぽの花 ・霧ふかい山ふところの溫泉の宿の日暮れを散る山桜 ・玲瓏とあをくはれてる大空のひるまぽつかり出たお月さま ・うえとれすの…

「存在」に就いて  古賀春江  (詩ランダム)

「存在」に就いて 古賀春江 うるんだ眼から指が動いて靑い水の滴りを掬ひあげる深い重みが遠い所からやつて來る微笑(ほゝえ)みながら頁をめくると掌の上にある桃色の鳩の羽が落ちぼけた顏をなめるやうに昔噺の本を案内する 切斷の整理はしかしどんなに努力して…

製作  古賀春江  (詩ランダム)

製作 古賀春江 純粋な理念は純粋な行為であつた私は昨日死んだのだ埃のために汚れた太陽も今洗滌しなければならない凡ての価値が両側の鳩のやうに落ちてしかし精神がある限りそれは色づけられては見られない 儚ない夢のはぎとられた時時間が見合をはじめる純…