2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

岡松雄 履歴その他 (モダニズム短歌)

岡松雄(おかまつ たけし) 履歴1908年(明治41年)8月12日高知県幡多郡奥ノ内村(現在の大月町)に生れる。 1925年(大正14年)4月1日(社員名簿には3月2日入社とあり)上京。書肆冨山房入社。同所で『橄欖』の小笠原文夫を知り短歌に興味を持つ。 1931年(昭和6年)前…

中野嘉一 Ⅰ  (モダニズム短歌)

・これが薔薇の花であるかといつて雀が一匹垣根を越ゑる ・電子(エレクトロン)ら 春の沿岸を泳いで 白い生物を探検する 眞空の世界は遙かに遠い ・毀れた街の斷面 水族館の硝子扉に石化したははこぐさ達 ・好きな幾何學が曇つてゐる 天井の雲雀は靑ざめてゐ…

廣江ミチ子 Ⅰ  (モダニズム短歌)

・花ひらく この家のフラスコは既に壊(こは)れた 古びたる庭の隅で羊齒は風琴を彈(ひ)いてゐた ・音符の灯がついた あかるい階段を一つ一つのぼつて行くピアニストのてぶくろの影 あれはラヂオです ・いく晩も年りんに月が出た 稚魚の住む みづうみは銀のら…

日比修平『冬蟲夏草』Ⅰ (モダニズム短歌)

・斯きて花ひらかせし罪ゆゑにひとでとなりて土にひれふす ・溫室の天のガラスに海港のとある場面がさかさまに見え ・御(おん)とのゐ絶えてあらねば球根はにく厚き芽をふきにけるかも ・溫室にぬすびとひそみ居るなれど花瓣がそつてひらく夜となり ・裝束の…

水夫とマルセイユの太陽  星村銀一郎  (稲垣足穂の周辺)

薔薇の化粧をしたマルセイユの太陽は軍艦のマストの上で逆立をしてゐるやうに 水夫は船窓の花の中から桃色のストツキングに包んだ足を出してゐる水夫の喫つてゐる暖かいコステユームに似た煙草は花屋の煙突である 港に菫色の薄明が盗人のやうに足を運んで來…