2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

山田盈一郎  (モダニズム短歌)

昭和初期は、林亞夫とともにエリオット、パウンドの影響下にあったようですが。 ・椅子の向ふに傾く海 記憶のシュミーズ 少女はリボンが何故悲しいか ・風は白い廣場で廻らない 蒼褪めた銅像の上に影が降りてくる ・丘を蒙古風のアクセントが越える 少女の素…

林亞夫(林亜夫)  (モダニズム短歌)

戦後は林民雄の名で歌を発表している。昭和12年ごろは、山田盈一郎とともに、エリオット、パウンドに惹かれていて、ポエジー派の颯爽たる理論家として知られていたらしい。簇劉一郎の友人の同名の童話作家は彼のことか。 ・醫學生が兎を買ひにゆく 花粉のな…

中村鎭(中村鎮)  (モダニズム短歌)

・自動階段(エスカレーター)。花ひとつ。私の足元まで昇つて來て踠(もが)いてゐる ・自動階段(エスカレーター)。自動階段(エスカレーター)。花ふたつ。平行に昇つて來て、左右の窓から別々に別れて行つた。 ・自動階段(エスカレーター)。花ふたつ。ひとつリ…

グウルモンにささぐ 衣巻省三  (稲垣足穂の周辺)

グウルモンにささぐ 衣巻省三 シモオヌ 雪はそなたの脛のやうに白い シモオヌ 雪はそなたの手のやうに冷い たそがれ 丘の上に雪がわたる丘の下ではたくさんのシモオヌが死んでゆく 無題 月光に空氣銃の先がひかつてゐる猫はむかふをむいて動かない私はトラン…

石原純  (モダニズム短歌)

・線條は面を幾何學的に劃し、風は常に新鮮である。さすがに畫布の上で女は永遠に微笑する。 ・ある夜壁面(へきめん)に白い花が開き、心臓が黄いろいふくらみを覺える。さて、心靈學者は徒に神秘を創造する。 ・忘れられたやうに朱塗の硯箱が置かれてゐる。…

簇劉一郎 Ⅰ  (モダニズム短歌)

歌人としては簇劉一郎または会田毅(本名:あいだたけし)、推理作家としては北町一郎。簇劉一郎は「そうりゅういちろう」と読むらしい(『論創ミステリ叢書 北町一郎探偵小説選Ⅰ』解説)。 ・東南風曇後晴 測候所横のグランドで 失策の多い試合が始まる 梅雨ばれ…