2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Pensee et Revolution des Danseurs en Ciel 山中散生 (稲垣足穂の周辺)

Pensee et Revolution des Danseurs en Ciel 山中散生 薔薇色のパラシユート 貴女のオペラハツトである晴天のこの飛行機に搭乗した予は薔薇色のパラシユートに滅形するであらう貴女の奇蹟的に流行型となつた一個の卵子 時にはパラシユートはパラシユートの如…

裂かれた森を貝殻の腦髄が梳いた 上田敏雄 (稲垣足穂の周辺)

裂かれた森を貝殻の腦髄が梳いた 上田敏雄 貝殻の側に星が岸へへばりついた 暫くたつた後で貝殻の生身が乳房のついた舌をのぞかせた 腦髄の割れた處に梳かれた頭髪がぎざぎざな岸をづり動かした後でなめらかな星をいただいてゐた 『FANTASIA』第1輯 昭和4年…

眠り男A氏の發狂行列  高木春夫  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

眠り男A氏の發狂行列 高木春夫 ストウブの影にて、石炭のおこつた顔が踊りだし、飛行器の丸窓からは、さかんに砂が落ちてきて、毛むくぢやらのステツキがおもちやの人形に接吻したり、ビルデイングのお姫さまを梯子形のローソクに照らして、のこぎりで誘惑し…

LOGIQUE DU OBJET 上田敏雄  (稲垣足穂の周辺) モダニズム     

A NISHIWAKI JUNZABURO LOGIQUE DU OBJET 髭の生へた麥酒瓶 髭の生へた麥酒瓶 髭の生へた麥酒瓶臺に頤を載せる女が彼女の髯の生へた踵を顧みる髭の生へた頭腦 髭の生へた頭腦 髭の生へた頭腦 衡り得る要求と服従は既に科學的で無感興である A ASAKA KENKICHI…

香炉の煙  稲垣足穂  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

香炉の煙 稲垣足穂 李白と七星 或る晩、李白が北斗七星をかぞへると、一つ足りなかつた。それが自分の筆入のなかに入つてゐるやうな氣がしたので、その竹筒を何回もふつてみたが、星は出なかつた。どうもをかしいと思つて、もう一度かぞへてみると、こんどは…

美木行雄 Ⅱ (モダニズム短歌)

・斷髪が 日にぱつと搖れ、 びるでんぐの角を 踵で廻る 洋裝の女。 ・街はづれの 暗い坂の上で、 へつどらいと ぢーつと廻り、 ─女(ひと)を乘してゐる。 ・ぱつと、 燭光をうけてあげる 横顔の、 鼻筋はきんととほり、 輝く眼のいろ。(Miss Junea) ・しよう…

マダム・ブランシュ 冨士原清一  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

マダム・ブランシュ 冨士原清一 1 いまに月があの尖塔の突先に、靑いアルミニウムの旗をあげさうなので、街中のいつさいの色彩は忽ちいち絛の白色瓦斯體となり、慌てて街燈のなかにかくれてしまひました。 ために花屋の花たちと化粧室の婦人らは衣裳をつけて…

白痴ある寶石  上田保  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

白痴ある寶石 上田保 女神の光を喞へた饗宴への嵐の光 海のパラソルをくだく憂鬱なる人魚 軟風を防禦する白痴のパラソル光る ひかる蜜臘の雲に接吻する優美なる雲母の幻想 海の宮殿に喞へた魔女の生命宇宙の魔術の園をのぼる雲母の樂園 燃ゆる人魚を飾る女優…

惡魔の影  山田一彦  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

惡魔 の影 山田一彦 OU ESPACE SANS HYPOTHÈSE 空を絞めて絨毯の血を毟る人類の憂鬱を見上げる 剃刀を嵌めた寢臺 彼女はもつと象眼の蓋の裏を撫でた 習慣の環を懸けた腿の外をひとつの雨の帆が馳せめぐる 他の雨の帆たちは明確に足をしめす 彼女は耳朶の麗ら…

海たち  山田一彦  (稲垣足穂の周辺) モダニズム

海たち 山田一彦 綠色の詩集と表紙 花たちが ふることができないために 夜は明けることができました呼吸の反射することのできる額の こまかいヨコ線の多い液體性の帽子雨のふるのに波のたてることのできない旗は鉛筆にひとしいものでした劍を吊つた馬と第5次…

CAPRICCIO 冨士原清一 (稲垣足穂の周辺) モダニズム

CAPRICCIO 冨士原清一 Night, such a night, such an affair happens. パレットにねりだされた多彩な繪具族のかなしみと、明暗の花咲く女性(かのひと)の寢室に燈つてゐた小さいLampのさびしさを、外套の釦である紫色のビイドロに覺えながら、私は細い頰を高…

稲垣足穂の周辺

稲垣足穂の周辺の人々がどのような詩や文章を書いていたか知って戴きたくて、それらを少し集めてみたいと思います。 石野重道 赤い作曲石野重道 キヤツピイと北斗七星石野重道 聳ゆる宮殿石野重道 廃墟 稲垣足穂 香炉の煙 上田保 白痴ある寶石 上田敏雄 裂か…

坂野健   (モダニズム短歌)

・踊る空中人形 風景に墜落してくる螺旋階段 鐘に午後三時の針が映る ・鏡に映つて結ぶ襟飾(ネクタイ) 手振り忙しい 一隅を鰭動かして魚族が過ぎる ・鏡の奥に凝視める瞳をみた 縹渺と 靜かな雲がゆききして絶間ない ・鏡の中に蘚苔類が生える 蝶の粧(すがた…

逗子八郎   (モダニズム短歌)

・沼澤地方の習慣で 發育した肢體のまま 取引所の走狗となつた ・山麓地帯の花盛りを過ぎてから あれは砲兵の儀禮ですと眼鏡を拭つた ・屋上庭園(ルーフ・ガーデン)。白鷺が並び美しい脚でタイプライターの擬音を立ててゐる ・林のなかの夕日。ウビガンの匂…

六條篤   (モダニズム短歌)

・はろばろと あかつき白きわが夢に 點々と汚れたる 神の足跡 ・この白きけものの肌を撫でさすり 木枯のたえまに とほき神々の跫音をきく ・凍りたる土に吐く嘔吐の 鬼畜となりて なほ 人を 神を憎めり ・わが背におびえて降りる 坂路の どこまでもつづく こ…