2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

平井乙麿  (モダニズム短歌)

・五月 靑い靑い 班猫(はんめう)のやうな眼になでられ ガラスのやうに痩せて 寢てゐる私 ・肉体ふかく 靑い魚のやうな眼と 班猫(はんめう)のやうな眼とがさいなむ 私といふものを ・眼をつむれば 白い細い線 眼球をくるみ肉体の底ふかく 細胞は崩れおちる ・…

BAISER OU TUER  冨士原清一  (稲垣足穂の周辺)

BAISER OU TUER 冨士原清一 acteurはmusiqueの帽子を被つたactriceを接吻し給へ (それは美しい殺人であるか) acteurの襟飾のうへにactriceの長い指が覗いてゐる ACTRICE TYPIQUE actriceはmusiqueの衣裳を脫いで裸體になり給へ actriceは優ぐれた腕をもつて…

加藤清  (モダニズム短歌)

・ひつそり影に沈む影 雲と草 僕を透明にする秋 ・分解する落葉の原理沫殺し紅色素(アントラチン)と僕の心象ふらすこに沈澱する ・僕の夢にメスは入れまい タンニン 紅色素(アントラチン) 分解する紅葉に君の記憶ばかりだ ・しろい雲とコスモスの群落地帶 靑…

白井尚子 Ⅰ  (モダニズム短歌)

・何時の間にか私を笑はせてゐる爽やかな風、春はうつり氣な花粉をまき散らす ・左様なら、と賑やかに少女達、周章てゝ逃げられた魂を逐ひまわす私 ・櫻草のひそやかな喜びが小さな客間のカーテンにやさしい息づきをおくる ・狹い部屋をとほつてゆく風、遠い…