2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧
花粉 井上多喜三郎 僕の癖のままに歪んでゐる自轉車でした くるつた僕の自轉車に平氣で乘るひとよ鷄や犢が遊んでゐる狭い村道を走りながらカネエシヨンのやうに手をあげるひとよ ※国会図書館デジタルコレクション版が落丁ありということなので全集版を主にし…
日曜 井上多喜三郎 靴磨き台上の 空の靑さよ 僕の頰に隣の草花店がうつるので蝶のやうにとびたつネクタイでした 公園 風の子が ソーダ水を捧げてくるコツプの中では 金魚がはねてゐる 濡れたリボンは フレツシユです 室内 豆ランプのなかには コオロギが住る…
井上多喜三郎の詩は、関西風堀辰雄という気がする。 徑 井上多喜三郎 枝々は靑いランプをともしてゐた ランプのまはりには春のコドモ達が住んでゐた 風がふくたびに やさしい歌の流れる徑でした ※この詩、初め国会図書館デジタルコレクションに基づいてアッ…
「秋たのし」まで丹羽信子名義、その後嫁いで桂信子となる。 ・短日の湯にゐて遠き樂を聽く ・木洩れ日にむらさき深く時雨去る ・梅林を額明るく過ぎ行けり ・沈丁に朝の素顔がよって來る ・「源氏」讀む朧夜の帯かたく締め ・春雷や夕べひとりの食卓に ・ひとづ…
ネット上で小澤靑柚子の句を余り見かけないので、できるだけ多く挙げてみました。 ・うでまくりしたるもろての草むしり ・風搏てどなびくあたはず靑める芝 ・あをぞらにたたかれバスの窓ゆけり ・森林のあをぞらに杭うつひびき ・鳩なりきみづくさあをき沼の…
近いうちに増補する予定ですが、余り長く休み過ぎたので、挙げておきます。 ・飢えたものの目が 行衞のない己の旅を急ぎたてるのではないか ・飢えたものたちが日夜あるいてゐる跫音がする露支國境地圖 ・狹い巢のなかで生長した己に 茫漠たる大陸地圖の示唆…