2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

太田靜子  (モダニズム短歌)

モダニズム短歌補遺ともいうべき歌群。太宰治『斜陽』の原作者太田靜子が、戦前短歌におけるモダニズム表現の集積地だった新短歌でどんな歌を詠んでいたかということで、ここに挙げておきます。 ・天使のダンテルがふるへ 悶えが續き、繪皿の夢に眠りたかつ…

草飼稔 Ⅱ  (モダニズム短歌)

・氷の下に空の映りだすのはいつだらう、川はどちらへも流れてゐない ・空にも雪が降つてゐて つひ 食卓に後姿でのこされ隣の人のナイフを握る ・どこからくる切なさであらう、松の花ほどの姿勢で ひたすら剃刀をみせてゐた ・もはや日數はうごかない、林の…

橋本甲矢雄  (モダニズム短歌)

・幻燈を見に行きませう あの古い傳統の繪は氣高いね 靜止の駝鳥勲章の輝かしさ ・馬に乗つてオリムピツクへ行く 僕の背なかでパラソルが廻つてゐる 廻つてゐるね ・雲のマントを脱ぎ裸の無花果はうぶ毛の芽をひらいた 早くお入りなさい ・春の無花果はけだ…

村上新太郎  (モダニズム短歌)

・正月朔日(ついたち)老いさらばひし木の葉さへ氷柱(つらら)とともにこほりゆくらん ・まなことぢ巢にこもりゐる鳥毛物(とりけもの)の思ひはおなじ秋の夜の雪 ・じとじとに夜霧かぶさる闇の山ぬれてねむれる鳥おもひ出づ ・おし流される思ひをつかむまた捨て…