孤獨
丘英二
憶ひ出の小夜曲をひきひき孤獨は訪れる
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示指が藥指より長い不思議な別れた戀人の秘密も感觸も今は油蟲に喰ひつくされた反古
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弦の切れた樂器のやうだとけなしても孤獨は何かしら親しみ深い表情で花のない花瓶に倚りかゝつて一夜中私を笑はせない
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禍福の轉輪を思ふてしんみりと床につくと孤獨は私の心を切り拔いて消える
1935.4.22
「臺灣文藝」第2巻第6号(昭和10年(1935年)6月)
臺灣文藝聯盟編輯 東方文化書局刊 復刻本より