2018-05-26から1日間の記事一覧

朝は白い掌を  乾直恵  (詩ランダム)

朝は白い掌を……… .. 乾直惠 朝が白い掌を私の額に翳す。私は新しい翼を生やす。 私は窓を開く。家家をめぐつた樹木は、もはやみんな葉をふるつた。それは約束された切手のやうに、吹き曝らされた小庭の隅や軒下に聚り、毀れた私の人生觀とともに蹲まる。 私…

村  乾直恵  (詩ランダム)

村 乾直惠 村の端れの傾斜した、公衆自働電話。破れた硝子戸に、千切れた夕雲が流れてゐる。水車番の腰のやうな把手が嗄れたその聲のやうな呼鈴の音が、遠い岬の松籟をひびかせる。 悪いことをした覺えはない。 だのに、私は送話器の雲母の 谿間から、この世…