魚骨祭
莊原照子
夕べ 假死した木立のうへで 侘しい手風琴を鳴らしてゐる
靑い仔鴉よ 充たされないおまへの食欲よ
けふ わたしは一さじの果汁を啜った
昔 搖りかごの谷間にさめた
そこですみれの花をたばねた
而も今 此の翳ふかき白磁の食器には 膓結核 唯するどい魚骨の棘あるのみ
夕べ 喪服の仔鴉よ 吹き鳴らせミゼレーレ
こわれたロマンの手風琴
激しいいたみに憑かれ乍ら おまへはまた呑みくだす
灰黄いろい花粉を アヘン末を
『マルスの薔薇 : ろまん・ぽえじい』昭森社 昭和11年(1936年)