遠い国 戸田房子 (詩ランダム)

 

 

遠い國

                                 戸田房子

動物は一匹であるいてゐた
はいいろの草原のむかうには
鉛色の海が重たくひろがつてゐて
わたしはその色彩のない風景が
かなしくてしかたがなかつた
粉土(こなつち)の道の上を 動物ははしつてゐた
動物は駱駝(らくだ)ににてゐた
腹がたぷたぷゆれて
化石した夢(ゆめ)のなかを
それがわかつてゐるとも思へないのに
やつぱり海の方へはしつてゆくのであつた

 

 

 

 

「台灣日日新報」昭和12年(1937年)12月26日
『日曜日式散歩者』(行人文化実験室 2016年9月)より

 

 

 

戸田房子 渡海

戸田房子 風車の庭

 

 


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