銀座の若いキリスト
近藤正治
ピアノのなかのホーキ星
エナメル塗のキレイな夜です
ボール紙と針金の敎會で
凸レンズの月を喰べませう
銀座の若いキリストは
ジヤツヂやワルツの跛つこです
むろん手足は花火だらけで
心臓が奏樂時計でございます
きらきらとしたシルク・ハツトも
キネマ銀河で濡れました
けふも貝殼やガラスの切符で
薄荷製の飛行車に乘つてきた
カステラの街の
シヤボン玉の飛行士。
※「跛つこ」は現在は使用できない言葉ですが、原詩のまま載せています。
『GGPG』第4集 大正14年(1925年)4月